2005/06/05

リターンとリセット〜私的「ICF的見方と支援」考〜

 ICD(国際疾病分類:傷病や死因の分類)とICIDH(国際障害分類:医学的な見方だけでなく、社会などとの関連性も踏まえ、多軸に人を見るための分類。ICFはこれの改訂版)の学習をしている時、指導してくれていたある先生がおっしゃっていたことが印象に残っている。「介護やリハビリテーションの提供は患者・利用者さんによって2パターンある。リターンとリセットだ」と。「リターン」とはワープロ操作でいうところの「改行」で現状は残したまま仕切直しする、ということ。「リセット」とは、再スタートということ。「リターン」とは骨折など一時的に機能は劣るが、また元通りに機能回復が図れることを指す。「リセット」とは切断など本来の機能自体がなくなるため、生きていく目的に合わせた新らしい生活スタイルを構築していく必要があることを指す。介護やリハビリテーションはそれぞれに合わせたサービス提供をしなければならない、ということだ。最近とても話題のICF(国際生活機能分類)について考えるとき、私はいつもその先生のお話を思い出す。

 ICFとは言ってしまえば、その人の障害の程度や生活環境などをベースとした単なる分類コードだ。しかし、このICFが話題となり、これからの介護やリハビリテーションの考え方を大きく変える(本来の正しい姿へ戻すといった方がよいか)起爆剤となるツールと言われている。なぜだろうか?それは、ICFを構成する「心身機能・身体構造」「活動」「参加」という3つで構造化された「生活機能構造モデル」にある。簡単にそのモデルを用いた一連の流れを考えてみると、障害を持つその人が生きていくための目標に合わせ、その3つの生活機能構造モデルそれぞれにも目標を設定し、その中でどれが最も大切であるかを考えてそれぞれの中から主たる目標を患者・利用者とともに考え、その主たる目標を達成すべくサービスを提供する、というものだ。従来の医療でもそうだか、介護やリハビリテーションでは患者・利用者が持つ障害を問題点として重視し、特に生きていく上での目的を考慮したわけでもない、また時には生きていく上ではその人には不要な機能回復訓練や補助具の提供などを行ってきた。ICF的な見方の場合は、障害を問題点としてみながらも、その障害以外のいたって普通に機能するところでその障害がもつ問題を生きていく上で限りなく「チャラ(差し引き0<ゼロ>)」にしてしまおう、というものだ。そして大事なことは、主役である患者・利用者にこのICFのモデルを提示し、共に目標を設定し、いっしょにやっていこうという姿勢をみせることだと思う。

 手塚治虫の漫画「火の鳥」をご存じだろうか。人の輪廻転生や因果応報をテーマとした未完のシリーズだ。その第4巻「鳳凰編」(舞台は奈良時代)の主人公「我王」は生まれたその日に片目・片腕となってしまう。その後紆余曲折あり、仏師となり、過去盗賊だった頃にケガを負わせた仏師:茜丸との勝負に挑むものの、その過去を暴かれ、残った腕を切断されてしまう。それでも我王は山に籠もり、都の人々の死んだような目つきに愕然としながらも、彫り続けることで全ての人間を生き返らせてみたい、と残された口を使って彫り続ける、というシーンで終える。そこには介護する人も、当然時代が時代なだけにリハビリテーションをする人もいない。目標を持って生きる個人の気力や必死さの力強さを強く感じさせると同時に、生きるにあたっての目標を重視し、「身体的な障害」を「チャラ」とすることで「人生における障害」はないことを教えてくれる。漫画とはいえ、多くのことを学ばせてもらった作品だ。個人そもそもが持つ潜在的な生活能力の強さを考えさせてくれる。ICFを考える時、このシーンを時折思い出す。

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